姥神(うばがみ)とは
姥神の定義の説明の前にまず、奪衣婆の説明をさせていただきたい。
山形県「作谷沢の姥神像」
奪衣婆とは、死後にあの世へ渡るための三途の川の岸辺にいて、亡者の衣を脱がせる存在である。なぜ脱がせるのかと言うと、その衣を衣領樹(えりょうじゅ)と呼ばれる木の枝にかけるためである。そうすると生前の罪の大きい者は枝が大きく下がり、小さい者はほとんど動かない。亡者の罪はその衣に重さとなって染み込んでいることになる。衣領樹は罪を量るはかりであり、それを審査するのが奪衣婆である。
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ー新型コロナ菌肺炎のパンデミックに寄せてー
昨年は、皇室の御代替わりで年号も平成から令和元年へと引き継がれました。
我が国は、東日本大震災を始めとする災害続きで七転八起の平成時代でした。しかし、多くの犠牲者を出し、課題は山積みでも、令和年号には明るい光を求めて歩み出したばかりです。
そこへ今、日本ばかりか予想だにしない世界的な規模で新型コロナ肺炎パンデミックが各国で拡散し猛威を奮っております。
未だ目に見えない相手に特効薬も、終息期の予想も付かない状況下で、ある日突然、自分が加害者或いは、被害者となるかも知れないのです。
密集、密閉、密接 の "三密 " と、自己中心の行動がコロナ菌の喜ぶ条件と申します。ならば 、今、私達に出来ることはただ一つ。それとは反対行動をとれば良いだけの話ですね。
当面は一人一人がその "三密 " を守りましょう。皆が心を合わせれば、コロナ菌は行き場を見失うのです。
どうか、世界各国が足並みを揃え、協力しあって一日も早く平和な日々が訪れますように。
編集局より
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全国の姥神像行脚(その17)せきの姥神
東京・江戸の姥神たち
前回は新宿正受院の姥神をご紹介しましたが、東京、江戸ではほかにも姥神信仰が多くあったようです。
江戸時代後期(文政4(1821)年~天保12(1841)年)、肥前国平戸藩(長崎県)松浦静山によって書かれた随筆集『甲子夜話』巻之六十三に、江戸時代の修験者、行智の関の姥神についての記文が紹介されており、そのなかで「せきの姥神の石像」について、咳に霊験のあるものとして、咳は「さえぎる」の意味の「関」が転化したものだろうという説明の後、江戸にこの姥神像が多くあったとあります。なお、例として、当時の姥神像の絵も残されています。
世田谷宗円寺
世田谷区に八幡山宗円寺があります。このお寺はもともと浜町にあり、そこから築地へ、その後現在の位置に移転してきたようです。
このお寺の境内に「しょうづかの御婆様」と呼ばれる姥神木像が祀られた小堂があります。像については、非公開となっています。縁起によると江戸時代の初期の頃から疫病など、特に百日咳に霊験があり、願をかけ病が治ると、そのお礼に真綿と茶を返していましたが、(咳がある時のどを真綿でまき、茶で潤していたため)それらで常に埋もれていたとのことです。現在もお堂を覗くと真綿に埋もれた姥神像を垣間見ることができます。
常には公開していないところ、木像であることは立山系列の信仰が影響していると考えられます。
中野大和町蓮華寺
中野区の大和町に泉光山蓮華寺があります。もともとは文京区にあり、明治44年に現在の位置に移転したようです。
泉光山蓮華寺 山門
蓮華寺姥神
蓮華寺姥神 頭に真綿が被せられています
蓮華寺姥神像縁起
このお寺には、咳のおばあさん、綿のおばあさんなどと呼ばれる姥神石像があります。由来によれば、この像は蓮華寺ではなく、目白にあった成就山本住寺にあったものらしく、蓮華寺の移転に合わせて本住寺が合併したため、現在の蓮華寺に祀られているようです。
昔から子どもの百日咳、夜泣き、様々な病気に霊験があったとされ、江戸で流行った姥神信仰の一つなのかと思われます。なかでも咳への信仰が強かったと思われ、現在も頭に真綿が被せられています。
江戸時代には奪衣婆についてもすでに周知されていましたので、奪衣婆のあの世とこの世を分ける関所としての役割から「関」が「咳」に転化し、立山を中心とする姥神信仰と結びついて「せきの姥神」という信仰が江戸で生まれたと考えることができます。
墨田弘福寺
墨田区弘福寺
咳の姥神…姥神だけではないのですが、墨田区の牛頭山弘福寺には、咳の爺婆尊があります。このお寺では隅田川七福神のうち布袋様を祀っています。
弘福寺爺婆尊
咳の爺婆尊については、爺と婆ですので、2体あり、咳の病気、風邪やインフルエンザなどに霊験があるとのことで、今も多くの参拝客が訪れています。境内ではお札の他、咳止め飴なども売られています。もしかすると、最近問題となっている新型コロナウイルスにも効き目があるかもしれませんね。
もともとは、風外禅師が父母の像を刻んだものであり、姥神のみではないので、ちょっと姥神信仰とは違うかもしれませんが、江戸で流行った「咳に霊験のある姥神」の影響を受けての信仰だと考えられますので、ご紹介させていただきます。
参考文献 「甲子夜話4」、松浦静山、平凡社、十九七八年
続く・・・
寄稿文
廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家
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