黄金の国ケセン
気仙(けせん)は、伝統文化がいまも豊かに息づく土地です。
歴史的には「黄金の国ジパング」の名の元となった金の産出地としても知られ、 信仰、祭礼、踊り、建築物や美術工芸などを今に伝えています。
柳田國男が絶賛した地としても知られ、宮沢賢治の創作の源の一つでもありました。
現在は、大船渡市、陸前高田市、住田町の2市1町に分かれていますが、 文化財の宝庫として、今もケセンは「黄金の国」と呼ぶにふさわしいエリアです。
気仙の色は未来を目指す記憶の色
〝浜らしさ〟広がる 大船渡漁市場
新年初営業日の大船渡市魚市場では、早朝の日の出前から水揚げ作業が行われた。日が昇り始めると、カモメたちも「待ってました」と言わんばかりに船の回りを飛び回ってエサとなる魚を求め、営業開始初日から、〝浜らしい〟光景が広がっていた。
(大船渡市大船渡町、1月)撮影:清水辰彦(東海新報社)
初冬の雪が描く遺構
初冬の雪が、粋な計らいをしたのかもしれない。栗木鉄山の足跡すべてを白く覆わず、レンガ模様と、そこに置かれ続けた証しであるコケを浮かび上がらせた。大正9年に廃業し、遺構と化してから来年で100年を迎える。厳しい寒さに耐えながら、地域資源を生かした製鉄の歴史を静かに伝える。(住田町世田米、12月)撮影:佐藤 壮(東海新報社)
光の中にかかる虹
高田東中生の制作したキャンドルホルダーが夕暮れに連なった。あたりが群青色へ沈むにつれ、少しずつ光の輪郭があらわとなる。東日本大震災の犠牲者追悼と、復興を祈る明かり。発災当時まだ幼かった子らがつむぎ、次の世代へと大切な思いをつないでくれる。光の中に、あすへの虹がかかった。(陸前高田市、3月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
明かりの力強さ
太平洋セメント大船渡工場の敷地内に整備されたバイオマス発電所が、2020年の年明けにも本格稼働を迎えようとしている。ヤシ殻などが燃料で、発電出力は75メガワット。国内最大級の規模になるという。気仙産業界の旗艦に加わった新設備の明かりに、復興の先を照らすような力強さを感じる。(大船渡市赤崎町、12月)撮影:大谷桂太(東海新報社)
凪いだ冬の午後に
初冬の日差しは光と影の居場所を優しく分け、風景に柔らかなコントラストをつくりだす。花壇のふちに落ちた木の葉をフレームにして、凪いだ午後の陽を浴びたビオラの花びらが、宝石のようにきらきらと輝いていた。ただそれだけで、泣きたいほど幸福な気持ちになるのはなぜなのだろう。(大船渡市大船渡町、11月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
より美しく取り戻した
震災後初となる実りの季節を迎えた高田沖。復旧が今春完了し、ほとんどのほ場で作付けが再開されたというから、いかに耕作者がこの日を待ち望んでいたかが分かる。碁盤の目状に整備された農地の、整然とした美しさよ。8年半かけて取り戻したのだと思うと、その輝きもいや増すようだ。(陸前高田市気仙町、9月)撮影:佐藤琢哉(東海新報社)
地域に根付く〝美しさ〟
大雨による増水で流されるたびに、地元住民たちが架け直している住田町下有住の松日橋。3日、今年2度目となる架け直しが行われ、住民たちが声と力を合わせて復旧作業に汗を流した。地元の住民たちが作業に励み、それを見守る町民の様子は地域に根付いた光景で、美しさすら感じられる。(5月3日)撮影:清水辰彦(東海新報社)
蔵の迷路を巡る夜
駐車場から母屋へとつながる夜の通路は、古き蔵だけが浮かび上がり、迷路の入り口に立ったような感覚になる。古民家を改修したまち家世田米駅は、商店街沿いの母屋が〝顔〟だが、山側の蔵並みも、独特のたたずまいで魅せる。夜のまち歩きは、時代を超える小さな冒険でもある。(住田町世田米、11月)撮影:佐藤 壮(東海新報社)
初夏の薫りも乗せて
最近は雨続きで、新緑のすがすがしさを忘れかけていた。雑草が刈られ、こざっぱりとした長安寺地内の踏切付近を、ゆっくりとすべるように進む岩手開発鉄道の貨物列車。積んでいたのは、石灰石だけではなかった。初夏の薫りと、自然と人とが織りなす山あいの情景の美しさに、しばし浸った。(大船渡市日頃市町、5月25日)撮影:佐藤 壮 (東海新報社)
この絵を仕上げるのは
晩秋。木立ちは絵筆に変わり、地面の上にえもいわれぬ美しいグラデーションを描き出す。茜色に柿色に赤朽葉色。それぞれの油絵の具をたっぷりととった筆先は、風の吹くに任せてキャンバスに色を塗り重ねていく。その上を歩く人たちのかさこそという足音を添えれば、この絵は完成だ。(陸前高田市高田町、11月)撮影・鈴木英里(東海新報社)
この眺望をツツジたちも
どっさり咲いた今出山のヤマツツジ。湾内に浮かぶ珊瑚島、あっちは広田半島。まちがだいぶできてきたな、防潮堤も──リアス式海岸の見事な景観と復興の進展を、ツツジたちも山頂から眺めて楽しんでいるのだろうか。燃え盛る花の群生をふもとから見上げ、思わずため息をもらす私たちのように。(大船渡市、5月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
まちが喜んだから
本丸公園で強い雨に降られた。参ったな、と思いながら市街地を見下ろすと、普段よりまぶしい。アスファルトが濡れて鏡になり、明かりを増幅させているのだ。歩行者天国となった通りの活況がここまで伝わる。きっとあのにぎわいがうれしくて、まちがいつも以上に頑張って光ってみたんだろうな。(陸前高田市高田町、7月18日)撮影:鈴木英里(東海新報社)
空の青 映す千町田
箱根山へ向かう市道は拡幅のため道沿いのスギ林の伐採が進み、麓に広がる田園風景「千町田(ちまちだ)」が一望できるようになった。水が張られ鏡のようになって、晴れた空の青を映す。秋の一面の黄金色にも勝るとも劣らない、初夏ならではの美景が広がる。
(陸前高田市、5月)撮影:千葉雅弘 (東海新報社)
「記憶の色」を訪ねて~Ⅱ~に続く・・・
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いま世界的に新型コロナパンデミックの真っ只中ですが、日本ではこれに追討ちをかけるように、7月初旬には「令和2年集中豪雨」と命名された災害で熊本県や岐阜県において沢山の方々が犠牲者となられ、大きな被害を蒙ったばかりです。
この度は9年前の東日本大震災において未だ復興途上にある三陸地域のニュースをお届けするに当たり、改めて犠牲となられたすべての方々へ謹んで哀悼の意を捧げるものです。
合掌
編集局記
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本号は、あれほどお約束したにも関わらず、またまた前号の続きを編集しております。
実は、大勢の読者からアンコールのご声援を頂きましたことに加え・・・
小生の中でのやり残し感、気仙についてもう少しご紹介したかったこともあり、かような仕儀に相成りました。ハイ!再三にわたってのこと、鎹八咫烏ならぬ、🐺狼ジジイと呼ばれても仕方がないことであります・・・天の声「何々?もっと反省しろ~喝!喝!喝!」
本日は、徹夜にても編集作業を終え・・・一刻でも早く「気仙三十三観音巡り」残りのご紹介をしたいと存じます・・・
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使
協力(敬称略)
東海新報社
気仙伝統文化活性化委員会
〒022-0002 岩手県大船渡市大船渡町鷹頭9−1 電話: 0192-27-1000
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