黄金の国ケセン
気仙(けせん)は、伝統文化がいまも豊かに息づく土地です。
歴史的には「黄金の国ジパング」の名の元となった金の産出地としても知られ、 信仰、祭礼、踊り、建築物や美術工芸などを今に伝えています。
柳田國男が絶賛した地としても知られ、宮沢賢治の創作の源の一つでもありました。
現在は、大船渡市、陸前高田市、住田町の2市1町に分かれていますが、 文化財の宝庫として、今もケセンは「黄金の国」と呼ぶにふさわしいエリアです。
あえて残す未完の空間
床を支える石や木材、側面には稲わらを混ぜた土や竹…。本来は目にふれない気仙伝統の建築技術を、あえて見せる。古民家を生かした、ふるさと創生大学の新学舎。未完ゆえに、多くの人々が関心を寄せ、自由で無限の可能性を秘める。今後は人々が集い、学び合いながら地域のあり方を考える。(住田町上有住、2月)撮影:佐藤 壮(東海新報社)
春はすぐそこまで
古刹(こさつ)・長安寺でフクジュソウが花開き、大船渡市魚市場ではイサダの水揚げが始まった。少し前まで連日続いた刺すような寒さをもう忘れつつある。穏やかな陽光を浴び、潮の引いた船揚場で見られる藻ですらも、どこかいきいきと見えてくる。気仙の春は、すぐそこまで来ている。(大船渡市末崎町、2月)撮影:千葉雅弘(東海新報社)
岩肌も柔らかに
暦上は真冬だが、年明けからひと月もたつと明らかに空の色が変化してくる。それは夕刻ごろ最も顕著となる気がする。一体何がそう感じさせるのだろう。色そのものより、空のまとう空気が春の気配を帯び始めるといったらいいか。夕日が照らす岩肌の質感まで、前より柔らかく感じられる。(陸前高田市・広田崎、1月)撮影:秋山 興(東海新報社)
天を目指し一歩ずつ
河津桜を撮りに行ったのだけれど、思ったほどには咲いておらず落胆していたら、足元にもぞもぞと動く気配を感じた。オオイヌノフグリをよじ登ろうとするナナホシテントウだった。薄い花びらの上は不安定。何度落ちそうになっても〝天道〟を目指す姿に、この小さき虫の名前の由来を思った。(陸前高田市高田町、3月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
仲良しメジロ
陸前高田市横田町の気仙川沿いにある桜並木。満開の時期が過ぎて葉桜も多くなった頃、一本の枝に、つがいらしい2羽のメジロが寄り添うように座っていた。小さな体を丸め、互いに羽や頭部を優しくついばむしぐさがたまらなくかわいい。花の蜜のように甘〜いカップルに、幸せを分けてもらった。(4月)撮影:阿部仁志(東海新報社)
あのころを感じたくて
この帆船によく似た塔で、子ども時代はよく「ごっこ遊び」をしたものだ。もう少し成長してからは友達と階段に身を寄せ合って座り、いつまでも話をした。以前の町の姿を知るよすががほぼ失われ、「懐かしい」と感じること自体減ったいま、〝郷愁〟を味わいたい時はここへ来る。(大船渡町・サンアンドレス公園、2月)撮影:鈴木英里 (東海新報社)
伝統つなぎ清流に彩り、こいのぼりの列
今年も、世田米・清水橋で5月6日まで 住田町世田米の新町親睦会によるこいのぼりの掲揚作業は21日、気仙川に架かる清水橋沿いで行われた。橋周辺のサクラが見ごろを迎え、スッキリとした青空が広がる中、愛知県内の企業や地域住民から贈られた色とりどりのこいのぼりが並び、今年も山里に華やかさと懐かしさが溢れた・・・
アーチの向こうはすでに
トンネルの向こうではもう、夏が始まろうとしていた。水を切る羽音にはっとして目をやると、そこにあったのは目の覚めるような海の青。小川が流れ込む先、たわむれる水鳥が浮かぶ浅瀬の浜辺が、一足先に次の季節を連れてきたのだ。今は鈍い梅雨空も、やがてあれと同じ色に染まるのだろう。(大船渡市末崎町、7月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
美しい影絵のような
お盆を迎えた大船渡市末崎町の麟祥寺。山門前には地域住民手作りの竹あかり約180本が並び、温かく柔らかな光が訪れる人たちを迎えた。ろうそくの炎を受けながら、竹に施された花や花火、流線などの模様が夜闇に浮かぶさまは、美しい影絵のよう。この光景が、天にも届いているのだろうか。(8月)撮影:三浦佳恵(東海新報社)
妖艶に染まる夏の水面
日照り続きの影響で、滝観洞の「天の岩戸の滝」は水量が少なく、今夏はおとなしく見える。逆に目を引くのは、たゆたう水面の神秘的な美しさ。照明が底部の岩に反射し、妖艶な紫色が不規則に揺れる。途方もない時間が生み出した鍾乳洞の空間は、非日常の癒やしを与える。(住田町上有住、8月)撮影:佐藤 壮(東海新報社)
伝統の「あいや」 小友町只出地区で9年ぶりに披露、盆踊りとともに復活
陸前高田市小友町の只出地区に伝わる舞踊と歌「只出あいや」が15日夜、只出漁港で披露された。東日本大震災の発生によって長らく公の場で踊られることがなかった「あいや」を地区の小学生や女性住民らが受け継ぎ、平成22年以来9年ぶりに只出自治会により実施された。
滝つぼの新たな装い
台風の影響でしばらく濁っていた川に、ようやく清らかな流れが戻った。ひんやりとした秋風が金糸で織り上げた錦楓。その衣をまとうせせらぎに、銀糸をふんだんに使った純白の帯を締めて。滝つぼに広げた裾の色は、澄みきった冷たい水が生み出す深い深い青緑だ。 (陸前高田市矢作町「大滝・小滝」、10月)撮影:鈴木英里(東海新報社)
ほのかな光温かく
雪が降り出したある日の夜、ふと外に出て、盛駅まで足を延ばしてみた。普段は何気なく通り過ぎる駅。車の姿もなく、風の音だけが聞こえてくる中、小さな駅舎にともるほのかな光が妙に温かく感じられ、雪の中でしばらく歩みを止めて見入っていた。
(大船渡市盛町、2月)撮影:清水辰彦(東海新報社)
水平線を彩る
雨が降ったり晴れたりのこの日。ふと水平線の方へ目をやると、鮮やかな虹があった。根元には宝ものが埋まっているというおとぎ話もあるが、そこが海だったらどうなるんだろう?そんな考えをめぐらせながらシャッターを切っていたら、自粛続きで縮こまっていた心が少し柔らかくなっていた。(大船渡湾口、4月)撮影:秋山 興(東海新報社)
「ふるさとの記憶」教えて
「失われた街」模型復元プロジェクト実行委員会が長部地区の模型を製作、23日から陸前高田市内でワークショップ
東日本大震災で被災した地域の震災前の街並みを模型にする「失われた街」模型復元プロジェクト実行委員会は23日(水)~29日(火)、陸前高田市内3カ所で住民の思い出話を聞くワークショップを開催する。これまであった高田町や気仙町の中心地の模型に、新しく気仙町長部地区が加わりました・・・
今度こそ…気仙33観音巡りに続く・・・
編集後記
まだまだ気仙地方のこと沢山ご紹介したいのですが、瞳が開かなくなってまいりましたので、本日はこの辺りで・・・東海新報社の上野和彦様、そして写真家の皆様ご協力ありがとうございました。これからも良いお写真お撮りください。楽しみにしています。
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いま世界的に新型コロナパンデミックの真っ只中ですが、日本ではこれに追討ちをかけるように、7月初旬には「令和2年集中豪雨」と命名された災害で熊本県や岐阜県において沢山の方々が犠牲者となられ、大きな被害を蒙ったばかりです。
この度は9年前の東日本大震災において未だ復興途上にある三陸地域のニュースをお届けするに当たり、改めて犠牲となられたすべての方々へ謹んで哀悼の意を捧げるものです。
合掌
編集局記
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鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使
協力(敬称略)
東海新報社
気仙伝統文化活性化委員会
〒022-0002 岩手県大船渡市大船渡町鷹頭9−1 電話: 0192-27-1000
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