ZIPANG-4 TOKIO 2020 小岩井農場と宮沢賢治(その3)~豊かな森林を後世に伝えます~

不毛の大地を、緑豊かな大地に

荒野に一本の⽊を植えることから始まった小岩井農場には、不屈の精神でやり遂げた何代にも亘る先人たちの志があります。

杉木立と紫陽花 誰が名付けたのかな⁉ アジサイロード

星と自然館からの眺め。ひろびろとした牧草地と奥の防風林


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いま世界的に新型コロナパンデミックの真っ只中ですが、日本ではこれに追討ちをかけるように、7月初旬には「令和2年集中豪雨」と命名された災害で熊本県や岐阜県において沢山の方々が犠牲者となられ、大きな被害を蒙ったばかりです。

この度は9年前の東日本大震災において未だ復興途上にある三陸地域のニュースをお届けするに当たり、改めて犠牲となられたすべての方々へ謹んで哀悼の意を捧げるものです。

合掌

編集局記

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森林整備のサイクル

 

森林の持つ大切な役割について

樹木は光合成によって二酸化炭素を吸収し、炭素を樹木内に蓄積します。さらに、森林は落ち葉などにより、土壌中にも大量の炭素を貯留します。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書によると、世界の温室効果ガス排出量の約11%は、森林が農地など他の用途に転用されたことによるものとされています。

逆に、気候変動の進行に対応し、森林を含む陸域、淡水及び海洋にすむ多くの生物は、生息域や季節的活動、移動パターン、生息数及び生物種間の相互作用を変移させているとされています。

森林の減少を抑制し、生物多様性が豊かで質の高い森林を守り増やすことで、森林による炭素の吸収の維持・増加や排出の抑制に寄与し、気候変動の緩和へ貢献することが期待されています。


スギの二酸化炭素吸収量

岐阜県収穫予想表に基づく試算


森林減少・劣化と私たちの暮らし

森林の減少・劣化の原因は様々です。その主な原因としては、プランテーション用地を含む農地等への土地利用転換、持続可能な森林経営を阻害する違法伐採、自然の回復力に配慮しない非伝統的な焼畑農業、燃料用木材の過剰な摂取、森林火災などがあげられます。

また、私たちは日常生活の中で、住宅、紙、家具など様々な形で木材を利用しています。
内訳をみると、約半分が建築用の製材や合板、4割が紙となっています。

国産材利用の割合は増えつつあるものの、我が国の木材供給量の約7割にあたる約5,105万㎥ (丸太換算、2014年) の木材が海外から輸入されており、日本で生活する私たちは木材の消費者として世界の森林に対し責任を負っていると言えます。


森林の有する多面的機能とは


我が国の森林は、様々な働きを通じて国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与しており、これらの働きは「森林の有する多面的機能」※と呼ばれています。

※森林の有する多面的機能とは
森林は、生物多様性の保全や気候変動の緩和の他にもさまざまな機能をもっています。

例えば、木材や紙の原料、きのこなどの食料、薪等の燃料の提供や、水源涵養といった役割の他、自然とのふれあいの場の提供にも貢献しています。

さらに、斜面崩壊・土石流の防止、洪水の緩和、海岸林による津波被害の軽減といった機能も果たしています。

このように、生態系を人々の暮らしを支える社会基盤として捉える「グリーン・インフラストラクチャー」※や「生態系を用いた防災・減災 (Eco-DDR : Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)」の考え方が、世界的にも注目されています。

※グリーン・インフラストラクチャーとは
土地利用において自然環境の有する防災や水質浄化等の機能を人工的なインフラの代替手段や補足の手段として有効に活用し、自然環境、経済、社会にとって有益な対策を社会資本整備の一環として進めようという考え方。


地域における生態系を用いると、インフラ等の導入・維持にかかるコストが抑えられる、様々な種類の災害に対処できる、平時にも様々な生態系サービスを得られる、といった可能性が広がります。

財政規模の小さな自治体や途上国の、総合的なまちづくりや災害対策においても有効な考え方と言えます。


温室効果ガスの吸収・排出量



小岩井農場

岩崎久彌(いわさき・ひさや)

(1865~1955) 三菱の創業者、岩崎彌太郎の長男として現在の高知県に生まれる。明治27年(1894年)、三菱合資会社設立と同時に社長に就任、三菱の第三代社長となる。在職20年余、彌之助の展開した諸事業を発展させ、今日の三菱の根幹を築く。明治32年(1899年)、井上勝より小岩井農場を継承。経営基盤の充実を図り森林の創出・充実を目指すとともに、牧畜中心の運営を推し進めた。

木材運搬(昭和30年頃)
木材の伐り出しは冬が中心。馬ソリを使って運搬していました。


✦挿話✦

戦後の尾張名古屋は、S.30年代に入っても全国一の木材集散地。
コストも抑えられるので、港から筏師が大量の木材を筏に束ね、堀川沿いに操り製材所に着くと、チェーンで吊り上げ製材していましたね…懐かしい風景です。

また、少々高くつくけれど馬力運搬は日常風景でもありました。

思い出すのは、当時のガキン子たちはこんな迷信を共有してましたっけ…それは、白馬に歯を見せると目が潰れるんだよ〜 ♫

だから白馬が向こうからやって来るとすかさず、互いに顔を見合せ勝負に出る訳です。
笑ったら負け!…早くも腹筋は波打つのに、必死で目と口を閉じた滑稽さをご想像あれ・・・幼き日に身についた習性と言うものは恐ろしきもの。小生、未だに白馬には一度も歯を見せたことがありませんから…。他の悪ガキたちのお目々は今頃無事なのであろうか? 気になりますね〜    


初代製乳所(明治33年)
牛乳の販売を始めたのは明治32年。この製乳所は明治37年まで使用されていました。


2,000ヘクタールの森~豊かな森林を後世に伝えます~

「百年の木材」を収穫


広漠たる原野に、植林を開始して百有余年、岩手山南麓の厳しい気候にあわせた独自の施業で、鬱蒼たる森林が形作られました。

現在は木を植えてから最終的に伐採するまでの期間を百年とし、建築を主体とした様々な木材需要に応えるべく、長期間育てた森から優良材の供給を続けています。

また、近年は三菱グループ企業が、小岩井農場で育てた木材を住宅に活用しています。


健全で多様な森林の維持

総生産量以下の収穫量(6,000㎥/年)と、気象害から造林木を護る小面積帯状更新法(帯状に一定幅で伐採する)を柱に持続可能な森林経営を行っています。

造林樹種も適地敵木を基本に、針葉樹及び広葉樹の植栽を行なうとともに、低コスト林業を目指した天然下種更新を推進しています。

また、山林施業の役割を担う、有限会社フォレストサービスを設立し、若手林業技術者を育てており、森林作業全般を主体的に展開するとともに、小岩井農場以外の地域の森林経営事業も担っていくことに着手。


環境に配慮した森林経営―資源としての樹木―

法正林モデル

木材は環境保全上優れた資源です。
樹木は二酸化炭素を吸収し、木材に加工された後も炭素を固定し続けます。そういった意味でも木材を各種用途に活用し、長く愛用することが環境に対して貢献することとなります。


法正林モデル

小岩井農場では、持続可能な森林経営を目指した法正林※モデル作りを1964(昭和39)年から行っています。

※法正林

法正林とは 毎年の成長量に見合う分の立木を伐採、植林する ことで、持続的森林経営を実現させる森林のこと。


森林の持つ公益的機能

森林の持つ機能は、木材の生産以外にも、二酸化炭素の吸収固定、安全な国土の形成、水源涵養機能、生物多様性の維持など多岐にわたり、私達の生活と密接にかかわっています。

これらの機能は、経済的な理由などにより管理の手が入らずに放置されているような森林では発揮されません。こうした理由から適正に管理された森林そのものが環境貢献であると考えています。


エネルギー源としての木質バイオマス

森林バイオマスはカーボンニュートラルという観点から、そのエネルギー利用の仕組み作り(間伐の徹底→出材→安定供給→利用の仕方)を、外部機関と協力して調査研究を進めています。


環境コミュニケーション ~緑を守り育てる・植樹祭~

植樹祭


小岩井農場の植樹祭は、緑の大切さの啓蒙と森林資源を守り育てようと1968(昭和43)年から続いております。

近年、地球環境保全の観点から、大気の浄化や水源涵養、さらには緑の環境維持といった森林自体の持つ公益機能が注目されています。

当社では、従来から長期的視点での森林資源の保全および有効活用による環境への貢献に努めています。植樹祭は、当初は従業員向けのものでしたが、現在では従業員だけでなく、OBや社外の方々など、ご家族を含めて一般の方にもご参加いただいており、植樹の輪が広がっています。


環境緑化事業

設計・施工、メンテナンスまでの一貫した事業体制で、人と地域に密着した緑の環境空間を創造しています。

小岩井農場植木植物園


自然と対話しながら、心やすらぐ環境づくり

1972(昭和47)年からはじめた環境緑化事業は、山林事業で培った技術と知識を背景に、岩手県のみならず、東北~関東~関西に至るまで、公園、工場、住宅地などの緑化造園を通じて、人と地域に密着した緑豊かな環境作りに貢献しています。

近年、地球規模の環境問題が重視されている中で、自然生態系が再生した機能するための環境整備にも取り組んでいます。また、都市域においては、ヒートアイランド現象による温暖化の防止、生物多様性の一助を目指した屋上緑化等も提案しています。


計画設計段階からお手伝い

数々の施工実績を生かし、お客様のご要望に基づき、施工する現場の諸条件の把握のために植生・土壌の基礎的調査、樹木診断等を行い、計画設計段階から緑豊かなより良い環境作りの実現に向けたご提案をしています。


緑化植物の生産と販売

植木植物園

40ヘクタールの苗木圃場に、アカエゾマツ、ヤマモミジ、カツラなど北国に適した樹木を主体に、常時250種、42万本を保有し、緑化造園工事からご家庭のお庭まで、お客様のニーズにお応えする樹木の販売も行っています。 2003(平成15)年からは、緑化樹木センターの一部10ヘクタールを「小岩井農場植木植物園」として春から秋までの期間、無料開放。開園期間中は植木市を開催し、お庭の設計・施工、庭木の手入れなどのご相談に応じています。 「植木植物園」とは、社団法人日本植木協会が企画した植物園で、植木の生産圃場を整備し、一般の方々が見学できるようにした植木の展示園です。


屋上緑化・壁面緑化(人工地盤緑化技術)への取り組み

近年、大都市部では人間の社会活動が作り出す排熱の増加や地表面被覆の人工化によって気温が上昇するヒートアイランド現象が顕在化し、大きな社会問題となっています。屋上緑化や壁面緑化等の推進による環境改善は、これらの温暖化防止の有効な対策になると共に、建物の美観の向上、くつろぎ空間の創出や緑のネットワークの形成など多様な価値創造に繋がります。

当社では、建物への負荷軽減や耐荷重等の制約が厳しい既存建物への緑化提案として、従来の屋上緑化と共に、湿生植物による『屋上湿生花園』、各種ポット苗を用いた『壁面緑化』、省水管理による『屋根緑化』等、各々の条件に最適な工法の提案を行っています。


水辺緑化、水質浄化への取り組み

浮島 

川、池、湖、湿原、水路など、水辺には様々な環境があります。植物は、それぞれの環境に適応しながら生育し、四季折々の表情を見せてくれます。

水辺環境の復元をめざし、独自技術による水草苗圃で育てた植物を利用し、植生護岸や多自然型川づくりへの取り組みをはじめ、生き物にやさしいビオトープ空間づくりの手助けや、様々な水辺環境の復元・創出について、植物サイドからの提案・設計・施工を行っています。

人工湿地 


水辺植物を配した湿地を創出し、その水質浄化機能による汚水浄化システムの技術開発に取り組んでいます。この技術は近自然省エネルギー型の水質浄化方法として注目されており、河川やため池からの生活排水、畜産排水に至るまで、様々な水質浄化の要望にお応えしています。


樹木診断・治療への取り組み

当社の樹木医が最新の技術・知識を駆使して行う樹木診断を通して、その健全性、危険性の評価を科学的な根拠に基づいてお客様に提示しています。

更に問題点を解決するための対策についても、樹木治療・維持管理・安全管理面等の総合的で的確なアドバイスを行います。


 

続く・・・



文化庁 重要文化的景観についての情報は、下記リンク記事をご覧ください。


ZIPANG-3 TOKIO 2020  文化庁 重要文化的景観選定 「今帰仁村 今泊のフクギ屋敷林及集落景観(沖縄編)」~あなたは、もうご覧になられましたか~

https://tokyo2020-3.themedia.jp/posts/6523216/  


ZIPANG-4 TOKIO 2020 石川の魅力は、自然と文化の調和「石川県の重要文化的景観 【文化庁選定】」

https://tokyo2020-4.themedia.jp/posts/7294095/ 



鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
石川県 いしかわ観光特使



協力(順不同・敬称略)

小岩井農牧株式会社 〒020-0507 岩手県岩手郡雫石町丸谷地36番地1 TEL:019-692-6027

環境省 〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351

農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1 電話:03-3502-8111(代表)

林野庁 〒100-8952 東京都千代田区霞が関1-2-1 電話:03-3502-8111(代表)



※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。

ZIPANG-4 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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